Vita-min(ビタミン)
題字:クレレナ
看板ねこさん

今宵もあのひとに会いに、店ののれんをくぐれば、「いらっしゃいませ」。
温かくて粋で凛々しい、いつもの笑顔で迎えてくれる、そんな素敵な女性たちが切り盛りする「おんなごはん」の物語を綴っていきたいと思います。

「おんなごはん」第4回 
魚は大分、野菜は東北・大阪から。
素材の声にみみをすませたくなる引き算の料理

いいときも悪いときも、お客さまに支えられて

100羽に1羽か2羽しかとれないという白肝を酒・みりん・醤油で実山椒とともに煮た「とりきも山椒煮」(1000円)。ねっとりとした食感と山椒の爽やかさがマッチ。

100羽に1羽か2羽しかとれないという白肝を酒・みりん・醤油で実山椒とともに煮た「とりきも山椒煮」(1000円)。ねっとりとした食感と山椒の爽やかさがマッチ。



 えっちゃんと秀嗣さんには、人をひきつける魅力がある。磁石のようにいろいろな人が集まってきて、店を開くにあたって重要なブレーンもそうした「縁」がきっかけで見つかった。
 店の内装を担当したデザイナーも、「えっちゃんの料理を、こだわりの純米酒で」というコンセプトの要である酒の仕入れ先「山中酒の店」との出会いも大きかった。
 そして、1987年7月、「さかなのさけ」はオープンを迎える。えっちゃん30歳、秀嗣さん39歳のときだ。

 時代はバブル景気に沸いていたこともあり、すべり出しは好調だった。途中、客足が鈍る時期もあったが、オープンから半年もたたない87年12月に、関西で絶大な人気を誇る料理雑誌『あまから手帖』で紹介されると、「忙しさで目がまわるって、ほんとうにあるんだなって実感」するほどの繁盛店に。
「お客さまを迎え入れるより、満席でお断りすることのほうが多い日がしばらく続いて。嬉しいより悲鳴をあげたくなるぐらいに体がしんどくて、何度も投げ出したくなった。水道の蛇口をひねって水が出るまでの時間がおしいくらいでした」
 笑顔になれず、イライラが募り、「自分たちのやりたかった店ってこんなんだっけ?」とつい思ってしまうときもあった。それでも、お客が幸せそうな顔で、
「ありがとう。おいしかったよ」
 と帰っていくのを見ると、「ああ、やっぱり明日もがんばっておいしいものを作ろう!」と元気になれる。
「わたしたちは、本当にたくさんのお客さまに応援してもらったと思います。どうにも暇なときに、たまりかねてよく来てくださっていた方に電話すると、『すぐ行くで!』と駆けつけてくれました。いいお客さまに恵まれたのは、わたしたちの財産ですね」