Vita-min(ビタミン)
題字:クレレナ
看板ねこさん

今宵もあのひとに会いに、店ののれんをくぐれば、「いらっしゃいませ」。
温かくて粋で凛々しい、いつもの笑顔で迎えてくれる、そんな素敵な女性たちが切り盛りする「おんなごはん」の物語を綴っていきたいと思います。

「おんなごはん」第3回
リストランテ級の素材にこだわり、
気軽な価格と直球な味で楽しませるイタリア酒場

それは、アンチョビバターの驚愕から始まった

「アンチョビバターです」
 運ばれてきたひと皿に、パチンと何かがはじけた。
 こんがり焼かれた三角トーストの小山。大胆に切り取られたバターの塊。そして、アンチョビフィレが数枚。
 そっけないほど簡潔な世界。しかし、バターとアンチョビ。ずるい、うまいに決まってる、の組み合わせだ。
 トーストに好きなようにのせて食べよ、ということだろう。
 おぼつかない手つきで、バターをたっぷり、アンチョビをちぎってトーストにのせる。手でつかみ、がぶりとかじりつく。
 目を見張った。胃袋が一気に覚醒する。トーストの香ばしさに、バターとアンチョビの塩気と脂。これ以上ないほどにシンプルなのに、とんでもなく食欲、いや快楽中枢を刺激する。
 それが、この店との出会い。

mescita
メッシタ
東京・目黒
鈴木美樹さん

イタリア(すべて星付き)と日本で15年修業を積んだ鈴木美樹さん

 イタリア語で「酒場」を意味する「mescita(メッシタ)」。
 目黒駅から徒歩20分と少し離れているが、夜な夜な、食いしん坊たちが嬉々として集まってくる。5.19坪の小体な店内はカウンター12席のみ。2011年4月24日オープンするや、連日、予約で埋まるこの人気店で、肉を切り、魚をさばき、鍋をふるうのは鈴木美樹さん(37歳)だ。

 お店のホームページにはこう案内されている。
「コップ酒片手に『さぁ、飯だ!』と明るく、幸福な、生命そのままの歓声で名前を呼んでください」

「メッシタ!」「メシだ!」
 おなかをすかせて、ようやくとびきりのごはんにありつけたときの歓喜。それは、どんな人をもほがらかにさせ、幸福に満たす。美樹さんがつくる料理には、そんなプリミティブな感動を呼び起こすパワーが漲っている。