Vita-min(ビタミン)
題字:クレレナ
看板ねこさん

今宵もあのひとに会いに、店ののれんをくぐれば、「いらっしゃいませ」。
温かくて粋で凛々しい、いつもの笑顔で迎えてくれる、そんな素敵な女性たちが切り盛りする「おんなごはん」の物語を綴っていきたいと思います。

「おんなごはん」第1回
酒料理だけではない、
ふくよかな喜びが満ちる和食の実力派

店の空気はお客さまといっしょにつくるもの


 満席状態が続いていたときは経済的には潤ったが、つねにバタバタしていて満足のいくおもてなしができなかった、と振り返る。
 「忙しいのがいやなのではなく、お客さまと向き合えないのがつらかった。ただただこなしていくだけの毎日。今日は少し寒いから温かいものを増やそうとか、新しいメニューを考えようとか、そういう余裕が一切なかった。一見さんばかりが通りすぎて、お客さまの顔が見えないのは不安でもありましたね」と佐和さん。朝子さんが言う。
 「でも、いま思えば、あの1年は私たちにとって修行だったんだと思う」
 「そうだね。お客さまの層が広がったおかげで、仕入れをちゃんとしようと築地で食材を求めるようになったし」
 さきほどのきめ細かいサービスができるようになったのも、連日満席の嵐が落ち着いたころから。だから、内容的にはいまがいちばん充実している、とふたりはうなずく。

カウンター席に座れたらラッキー。佐和さんの無駄のない仕事ぶりが拝めます

カウンター席に座れたらラッキー。佐和さんの無駄のない仕事ぶりが拝めます



 お店をやっていくうえで大切にしていることはなんだろう。ちょっと間をおいて、佐和さんがかみしめるように答えた。
 「正直でありたいですね。うん。なにをするにも正直って大事だと思う」
 正直って?
 「たとえば、少ししおれた野菜でも火をとおせばごまかせるだろうとか、ちょっと焼きすぎちゃったけど出しちゃえとか。そういうことは絶対にしない。当たり前なんですけどね(笑)」
 でも、その姿勢は大事だと思います。そして、シャンと律儀に守っているところ、もしかしたらそうそう多くはないかもしれませんよ、そう言うと、笑いながら、
 「あと、いいお客さまに来ていただいたときはうれしいし、傍若無人なお客さまだとやっぱりうれしくはない。そういうことにも正直でいたいと思う」と言う佐和さんに続けて、朝子さんも、「お店って、お客さまと一緒になって楽しい空間をつくるものだと思うんですよね」。
 反芻するように佐和さんがしみじみ言った。
 「今日はいい一日だったなあと思うときって、私たちもいい時間をすごせていて、お客さんたちもこちらから見ていて楽しそうな空気に包まれているとき。そういう時間を一日でも多く積み重ねていきたいですね」

 ――それから数日後。夜8時をまわったころに[やくみや]を訪れた。お、今日も繁盛してるね。すでにリラックスした笑顔が店内にいくつも花咲いている。
 「いらっしゃい」
 いつも以上でもなく、いつも以下でもなく、普段どおりの温度で迎えてくれるのがうれしい。カウンターに腰をおろしながら、活気があって、いい空気だね、そう二人に告げると、仕事が充実しているひとがチラッと見せるあの笑顔を見せてくれた。

日替わりのお通しとスイーツ(酒に合うんです、これが!)、自家製の果実酒、味噌、塩麹などは朝子さんの担当。

日替わりのお通しとスイーツ(酒に合うんです、これが!)、自家製の果実酒、味噌、塩麹などは朝子さんの担当。



やくみや
  • 住所:東京都新宿区荒木町1番地 なかばやしビル 2階
  • 電話:03-6318-3421
  • 営業時間:
    月・水〜土18:00〜24:00(L.O.23:00)
    日曜17:00〜23:00(L.O.22:00)
    火・祝休み
  • ブログもぜひ。

やくみや

やくみや