Vita-min(ビタミン)
題字:クレレナ
看板ねこさん

今宵もあのひとに会いに、店ののれんをくぐれば、「いらっしゃいませ」。
温かくて粋で凛々しい、いつもの笑顔で迎えてくれる、そんな素敵な女性たちが切り盛りする「おんなごはん」の物語を綴っていきたいと思います。

「おんなごはん」第1回
酒料理だけではない、
ふくよかな喜びが満ちる和食の実力派

いいときも悪いときもブレずに媚びずに


ふっくらアジフライタルタルソース600円は自家製タルタルだけで酒が進む

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 そしていまの場所、荒木町に移ってオープンしたのが2007年11月24日。場所は新宿界隈と決めていたが、「最初、荒木町は選択肢として考えていなかった」というのは佐和さん。朝子さんとふたりで、代々木上原、新宿三丁目、早稲田、中野あたりの物件を見て回ったが、どれもピンとくる空間ではなかった。そんなとき、ふいに2度めのお告げが佐和さんに舞い降りる。
 「あ、荒木町って頭に浮かんだんです。べつに何かを見たわけでもないのに」
 で、荒木町の空き店舗を2軒見て、現在の11坪の物件に決めた。元スナックで、雰囲気は現在の[やくみや]がもつ明るくて清潔な店内とは真逆だったという。
 「とにかく真っ暗で、じゅうたんが敷かれていて赤いベルベットの丸い椅子。ザ・スナックって感じでした。でも佐和ちゃんがここがいいって言って」
 「なんかね、ふたりではたらいている姿が想像できたんです」

だしまで飲み干しちゃう秋鮭と秋茄子の揚げ出し800円

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 正式に不動産契約をし、2007年9月に着工。全面改装となったため、工事費は1000万円を費やすことに。新規開業の最大のハードルといってもいい資金調達。佐和さんのようにバイトで飲食業界を渡り歩いてきた人や自由業者が融資を受けるのは正直厳しいのが現状。頼みの綱は看護師だった朝子さん。すでに辞職していたものの、前年の源泉徴収が社会的地位の証明になる。無事に公的融資の審査が通り、物件取得費と合わせて、約960万円の新規開業資金を得ることができた。
 「もしかしたら、もっと安く抑えられたかもしれないけど、ほとんどが厨房設備にかかわるお金。そこを削ったらいい料理はできないと思ったし、最初にかかる費用はこれぐらい覚悟していた」というのは朝子さん。
 内装も細部までこだわった。イメージはギリシャの明るい陽光が差し込む雰囲気。
 「いわゆる和風の木造的にはしたくなかった。女性が一人でも気軽にごはんを食べられるカフェのような感じ。白とブルーにカラーを統一して、清潔な印象をもたせた」とふたり。