Vita-min(ビタミン)
題字:クレレナ
看板ねこさん

今宵もあのひとに会いに、店ののれんをくぐれば、「いらっしゃいませ」。
温かくて粋で凛々しい、いつもの笑顔で迎えてくれる、そんな素敵な女性たちが切り盛りする「おんなごはん」の物語を綴っていきたいと思います。

「おんなごはん」第4回 
魚は大分、野菜は東北・大阪から。
素材の声にみみをすませたくなる引き算の料理

鍋を見つめる背中が語っているようで。

 つい背中に魅入ってしまった。
 男は背中で語るというけれど、私が釘づけになったのは女性の話。料理人である。

 六本木交差点のきらびやかな賑わいを背に、溜池方向のゆるやかな坂を下って数分も歩くと、つい先ほどまでの喧噪はかき消える。細い路地を入ったところに、その店はある。
「さかなのさけ」
 回文めいた名前は、「酒の肴」をひっくり返して「肴の酒」。肴は「魚」ともかけている。その名のとおり、「さかなのさけ」は、西(大分と大阪)の白身魚と、各地の小さな酒蔵が醸す日本酒を中心に、そのときどきの旬を味わう店だ。
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2012年12月1日

「おんなごはん」第3回
リストランテ級の素材にこだわり、
気軽な価格と直球な味で楽しませるイタリア酒場

それは、アンチョビバターの驚愕から始まった

「アンチョビバターです」
 運ばれてきたひと皿に、パチンと何かがはじけた。
 こんがり焼かれた三角トーストの小山。大胆に切り取られたバターの塊。そして、アンチョビフィレが数枚。
 そっけないほど簡潔な世界。しかし、バターとアンチョビ。ずるい、うまいに決まってる、の組み合わせだ。
 トーストに好きなようにのせて食べよ、ということだろう。
 おぼつかない手つきで、バターをたっぷり、アンチョビをちぎってトーストにのせる。手でつかみ、がぶりとかじりつく。
 目を見張った。胃袋が一気に覚醒する。トーストの香ばしさに、バターとアンチョビの塩気と脂。これ以上ないほどにシンプルなのに、とんでもなく食欲、いや快楽中枢を刺激する。
 それが、この店との出会い。
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2012年12月1日

「おんなごはん」第2回
看板は、毎日焼く「酒に合うパン」。
酒好きなふたりとの会話がおいしい時間をつくる

誰もが「私のとっておき」と言いたくなる店

 横浜といえば中華街? 山下公園? みなとみらい? そんな観光地的な横浜がオモテの顔だとしたら、今回のおんなごはんがある「野毛」は横浜のウラの顔。戦後の闇市から続く野毛には、60年以上の歳月を重ねた店も多い。「福田フライ」「三陽」「第一亭」「武藏屋」「ホッピー仙人」「クライスラー」など、個性あふれる酒場が軒をつらねる。どこも安くておいしくてゴキゲンなこのまちに、またひとつ、新しい魅力が加わった。
[Bakery&Bar YO-HO]
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2012年12月1日

「おんなごはん」第1回
酒料理だけではない、
ふくよかな喜びが満ちる和食の実力派

荒木町に誠実な仕事ぶりが光る
おんなごはん、あり

 新宿区のなかでも荒木町は特別な顔をしている。石畳の路地に料亭や小料理屋、バーなどがひしめき、かつての花街を思わせるしっとりとした風情がただよう。老舗ばかりじゃなく、最近はこのまちの磁場が気に入り、新しく店を構える若いひとも増えていて、こじんまりした普段づかいのバルやイタリアン食堂が新風を吹き込んでいる。
 そんな荒木町、夜な夜な酔人たちでにぎわう杉大門通りの一角にブルーの看板がひときわ清々しい「おんなごはん」がある。林佐和さん(40歳)と石塚朝子さん(39歳)のふたりが迎えてくれる[やくみや]だ。
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2012年12月1日